クルマを通じてカーライフを豊かに

ルパン三世が愛した旧「フィアット500」こと「チンクチェント」

2015年10月、あのモンキー・パンチ原作の名作アニメ「ルパン三世」の新シリーズが始まりました。

30年ぶりの新シリーズのPVをもう見た人も多いかと思いますが、そこに登場するルパン一家の愛車はあの懐かしき「フィアット・500(チンクチェント)」。
映画「カリオストロの城」などでの大活躍をご記憶の方も多いでしょう。

フィアット500は近年になってフィアット自身によりリメイクモデルが販売されています。
ここでは、ルパン一家が使っている旧「フィアット500」こと「チンクチェント」(以下、チンク)がどのような車かを紹介します。

実はあの「チンク」は二代目

画像引用 ja.wikipedia.org

フィアット500の歴史は、第二次世界大戦までさかのぼります。
1936年に発表された2人乗りの小型車「フィアット500」が初代です。

「トッポリーノ」(ハツカネズミ)の愛称で呼ばれ、小さいながらも活発な走りをする事から好評で、1955年まで生産されました。

1953年には映画「ローマの休日」にも登場し、当時のイタリアの代表的な大衆車だったのです。
日本のスバル360や、ドイツのフォルクスワーゲンタイプI(ビートル)のような存在だったのですね。

その初代フィアット500の後継車として1957年に登場したのが「フィアット・NUOVA500」です。

イタリア語で「500」を意味する「チンクチェント」と呼ばれたこのモデルが、「ルパン三世」に登場して、日本人に「ルパンと言えばこの車」と言われた車です。
以下、この2代目フィアット500を「チンクチェント」と呼びます。

チンクチェントは四輪の屋根付きスクーター?

www.unicef.it

チンクチェントは初代500「トッポリーノ」の開発にも関わった名設計者、ダンテ・ジアコーザの手により開発されました。
当時既に「トッポリーノ」の後継車としては、同じダンテ・ジアコーザの開発したフィアット600「セイチェント」が開発されていました。

「セイチェント」は2人乗りの「トッポリーノ」に対して4人乗りとした上で、スペース効率の追求や軽量化のため、リアにエンジンを積み、リアタイヤを直接駆動しました。

安価な4人乗り小型車として「セイチェント」は成功作となります。
しかし、当時のイタリアでは簡便な移動手段としてスクーターが大人気となり、日本でも有名なベスパを始めとする多数のメーカーが製造・販売を手がけていたのです。

主に自動車を買えない層を対象に人気だったスクーターのユーザーに対し、安価な自動車を提供して、新しいユーザーの獲得を狙ったのが「チンクチェント」でした。

そうして「チンクチェント」いわば「四輪の屋根つきスクーター」として開発されました。
後にインドのタタ・モータースが多数の二輪車ユーザーへのアピールのため、安価な超小型車「ナノ」を2008年に発表しますが、フィアットは50年以上前に同じコンセプトで「チンクチェント」を作ったわけです。

最大のスペース効率と、最高のコストパフォーマンスを目指して

画像引用 www.rsvn.it

「チンクチェント」はスクーターのユーザーを取り込むため、とにかく安価に、なおかつ2人乗りのスクーターとの差別化のため4人乗りである必要がありました。
そのため、リアエンジンと後輪駆動でパワートレーンが占めるスペースや重量を最小限に抑える「セイチェント」と同様の手法が取られています。

その上で、「セイチェント」の水冷直列4気筒663cc・21馬力のエンジンでもまだコストが高いとして、「チンクチェント」には空冷直列2気筒479cc・15馬力という必要最低限のエンジンが搭載されました。

たった15馬力で普通の自動車のように走れるのか疑問に思うかもしれません。
でも、車両重量もわずか470kgしか無かったので、アクセルを床まで踏み込みエンジンを高回転まで使えば、最高速度は95km/hを発揮したのです。

さすがに最低限の装備と、安価で震動が激しく、常に高回転まで回してやらないといけないエンジンの組み合わせは乗り心地の面で厳しいものがありました。
そこで騒音を逃がすため、苦肉の策として天井には開閉可能な「キャンバストップ」が設けられました。

「ルパン三世」でも、斬鉄剣を振りかざした石川五右衛門が「チンクチェント」の天井から飛び出したり、次元大介が天井から身を乗り出してコンバット・マグナムを発砲したりするシーンがよくあります。
あの開いた天井は実は騒音対策だったのですが、アニメの小道具として思わぬ役に立ったと言えるでしょう。

「ルパン走り」を可能にするのはこれしか無い?

画像引用 www.cinematoday.jp

さて、15馬力のエンジンで常にアクセル全開で走る必要がある、そんな「チンクチェント」に、「ルパン三世」でルパンがドライブするような走りは可能なのでしょうか?
道路どころか崖にへばりつくように走り、パトカーを振り切るような、パワフルな走りはできるのでしょうか?

答えは「NO」です。

最初は15馬力、最終的に23馬力にまでパワーアップされたとはいえ、「チンクチェント」が非力な事には変わりません。

実用車としてはともかく、名泥棒の逃走の足としては向いていないと言えるでしょう。
ところが、そんな「チンクチェント」にも実はスーパーモデルが存在します。
イタリアのチューナー「アバルト」がフルチューンした「アバルト695SS(エッセ・エッセ)」です。

689ccまで排気量を拡大し、38馬力を発揮するアバルトエンジンを搭載した「695SS」は最高速度が140km/h以上に達し、レースでも大活躍したモデルです。

「ルパン走り」をやるにはこれでも不足かもしれませんが、ルパン一家が使用するに当たって、アバルトチューンか、それに類するチューニングが施されているのは間違いありません。

アニメの映像を見ていると、フロントに装着されているエンブレムの形状が通常のフィアットのように見える場合が多いので(シーンによってはアバルトの時もあり、特に新シリーズではアバルトエンブレムになってます)、見た目は普通の「チンクチェント」でも、中身はルパン仕様なのかもしれませんね。

まとめ

いかがでしたか?
今回は「ルパン三世」により、日本では一躍有名になり、最新作でも登場するフィアット500「チンクチェント」の解説をさせていただきました。

「チンクチェント」は1977年で生産が終わっているので、ミニやビートルのように最近まで作られていた車両はありません。
しかし、イタリア本国では超党派の国会議員による支持団体があり、事実上「チンクチェント」を保護するための、ユーザーを優遇する法律まで存在します。

そのため、古いながらも程度の良い個体が数多く存在しますので、一度ファッション感覚で所有してみて、「ルパン三世」の気分を味わってみるのもいいかもしれません。